今治タオルの斜陽時代を乗り越えて

弊社がホームページを開設したのは、2003年のことです。

当時から、校章や園章を刺繍した記念品のハンドタオルを、弊社の目玉商品のひとつとして制作してまいりました。

そこで出会ったのが、今治でつくられたハンドタオルでした。

校章や園章には、細かな文字や線、複雑な意匠が使われているものも少なくありません。その精緻な刺繍を美しく仕上げるためには、刺繍の技術だけではなく、その土台となるタオルにも相応の品質が必要です。

布地の厚み、手触り、織りの安定性、そして刺繍を施した時の仕上がり。

記念品として長く使っていただくものだからこそ、タオルの品質にもこだわりたいと考えていました。

しかし、2000年代初頭の日本のタオル業界、とりわけ今治の産地を取り巻く環境は、決して明るいものではありませんでした。

市場には安価な中国製をはじめとする輸入タオルが数多く流通し、価格競争が激しくなっていました。価格の高い日本製タオルは苦戦を強いられ、今治の産地も厳しい時代を迎えていました。

当時、お付き合いのあった問屋から、

「今治では染工場や織工場が次々と閉鎖している」

という話を何度も聞きました。

そして、とうとう弊社にも、その波がやってきました。

長く仕入れていた大手タオル問屋から、

「今後は中国製タオルの販売に切り替えるため、今治製ハンドタオルの取り扱いを中止します」

と告げられたのです。

代わりの商品として、中国製のハンドタオルを勧められました。

しかし、実際の商品を手に取ってみると、それまで使ってきたものとは大きな違いがありました。

本来なら四角いはずのハンドタオルは、楕円形のように歪んでいるものがあり、ヘム部分の運針もまっすぐではなく、曲がりくねっていました。

もちろん、現在では海外製品の品質も大きく向上しております。

しかし、少なくとも当時、私が手にした商品については、大切な校章や園章を刺繍し、記念品としてお客様にお渡しするものとして、納得できる品質ではありませんでした。

技術のある刺繍に伴ったそれに相応する台座でなくてはならない。

そう考えました。

とはいえ、それまでの仕入れ先からはもう購入できません。

そこで、今治製のハンドタオルを扱っているところを探すことにしました。

インターネットが今ほど便利ではなかった時代です。

電話をかけては問い合わせ、また別の会社へ電話をかける。

「今治のハンドタオルはありませんか」

「継続して仕入れることはできますか」

何軒も問い合わせを重ね、ようやく取り扱っている仕入れ先を見つけることができました。

こうして弊社は、今治のハンドタオルを使い続けることができました。

そして、その後――。

厳しい時代にあった今治のタオル産地に、大きな転機が訪れます。

今治タオルの産地再生を目指したブランドづくりが本格的に始まり、クリエイティブディレクターの佐藤可士和氏を迎えたブランディングプロジェクトが進められました。

現在では広く知られている、赤・白・青を使った、あの有名な「今治タオル」のブランドマーク。

単にロゴをつくるだけではなく、品質基準を明確にし、「今治タオル」という名前そのものを信頼されるブランドへ育てていく取り組みが進められました。

かつては安価な輸入品に押され、産地そのものの存続さえ危ぶまれていた今治タオル。

それが今では、日本を代表するタオルブランドのひとつとして、多くの方に知られる存在になりました。

当時を振り返ると、不思議な気持ちになります。

大手問屋から取り扱い中止を告げられ、それでも「この品質のタオルを使いたい」と、電話をかけ続けて探した今治のハンドタオル。

そのタオルが、時代を越えて復活し、今では全国にその名を知られるブランドになったのです。

そして、当時「中国製に切り替える」と今治製タオルの取り扱いを中止した大手問屋も、今では東京の中心に旗艦店を構えるまでになっております。

時代は大きく変わりました。

弊社もまた、2003年のホームページ開設以来、校章・園章刺繍の記念品として今治のハンドタオルを使い続けてきました。

流行や価格だけを追うのではなく、実際に手に取り、刺繍を施し、「これならお客様にお渡しできる」と思えるものを選ぶ。

それは昔も今も変わりません。

卒園、卒業、創立記念、周年記念――。

一枚の小さなハンドタオルには、その学校や園で過ごした時間と、大切な思い出が込められています。

だからこそ、その思い出を載せるタオルにも、そしてそこに施す刺繍にも、私たちはこれからもこだわり続けたいと思っています。

あの厳しい時代を乗り越えた今治タオルとともに。

みなみ刺繍にも、いま代替わりの時期が訪れています。

時代が変わっても、変えてはいけないもの。
そして、新しい時代に合わせて、変わっていかなければならないもの。

これまで大切にしてきた品質へのこだわりを次の世代へ受け継ぎながら、みなみ刺繍もまた、新しい時代へ向かって歩みを進めてまいります。