レーヨン糸はほんとうに土に還るのか― 刺繍屋の小さな実験 ―
コロナ禍の最中、ふとした疑問から小さな実験を行いました。
レーヨンは天然由来の原料から作られた再生繊維ですが、文献では“生分解性がある”とされる一方、実際のところはどうなのかというのが気になっていました。
「レーヨン糸は本当に土に還るのだろうか?」
そこで、身近な材料を使い、自分なりに確かめてみることにしました。

約11cmの長さの120デニールの太いレーヨン糸を割り箸にくくりつけました。
どこまで土に入っているかが分かるよう、割り箸を目印にしています。

25ミリの土を鉢底に敷き糸を垂らしました。土は腐葉土を混ぜた一般的な花土を使用しています。

鉢は日当たりのよい窓際の室内に置き、
土の表面が乾いたタイミングで水を与える、という管理を続けました。
特別な処置はせず、できるだけ自然に近い環境を意識しました。

ひと月が経過し、割り箸を引き抜いてみると、
地表近くに出ていた部分はわずかに残っていたものの、
土に深く埋まっていた部分のレーヨン糸は、分解が進み完全に消失していました。
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刺繍糸として使われるレーヨンは、
色数の多さや光沢の美しさに加え、光の加減により糸の柔らかさや表情が違って見えるという特徴を持っています。
ロゴや文字を美しく表現できることから、長年にわたり多くの刺繍現場で使用されてきました。
一方で、「化学繊維」というイメージから、
環境への影響を気にされる方も少なくありません。
今回の実験で、レーヨン糸が土中で消滅していく様子を目にし、
素材の背景には、単純な分類では語れない側面があることを改めて感じました。
土に還るという性質は、レーヨンが天然由来の原料から作られた再生繊維であり、
条件によっては、自然の循環の中で分解されていく可能性を持つ素材であることを示しています。
「使ったあとにどうなるのか」を考えるきっかけとして、
この小さな実験には意味があったように思います。
刺繍は、多くの人に長く使われ、手元に残るものを作る仕事です。
だからこそ、見た目の美しさだけでなく、素材の特性やその背景にも目を向けながら、
これからも、レーヨン糸を愛してやまない作品を作り続けていきたいと思います。






























































































