刺繍グラディーションについて
刺繍におけるグラデーションの表現は、複数の色糸を用いることが一般的ですが、実際には2色の糸のみで微細な階調を作ることが可能です。この技法では、対象となる面を約5つの層に分割し、最下層には濃色の糸を3層にわたり重ね縫いします。次第に上層へ進むにつれて、重ね縫いの層数を2層、1層と減少させると共に、糸密度も段階的に低減させます。このように糸密度を調整することで、糸と糸の間に空間が生まれ、光の透過性が高まります。特にレーヨン糸は光の反射性に優れており、光の入射量により色彩が変化し、自然なグラデーション効果が得られます。ただし、この技法を表現するためには、精緻な型の設計と試作が必要であり、型の製作には相応の時間とコストがかかります。