「綻」という漢字の不思議

みなみ刺繍お仕事ブログの中の「綻」という漢字についての疑問


刺繍の仕事をしていると、ふと不思議に思う漢字があります。

「綻」という字は、糸編に定という作りから漢字が成り立っています。
糸が定まるので、まるで結ばれているような印象を受け、なんとなく「結ぶ」「整える」といった意味を連想してしまいます。

ところが、読み方は「ほころぶ」。
意味は、衣服の縫い目がほどけること。さらには、つぼみや表情がゆるみ、開いていくことを表します。

まるで漢字の形と意味が正反対のようにも感じられます。調べてみると、「綻」は「糸」と「定(てい)」からできた漢字ではなく、「糸」と「定」に似た「(たん)」という音を表す部分から成り立っているそうです。つまり、「糸」は意味を表し、右側は「タン」という音を示しているため、必ずしも「糸が定まる」という意味ではなかったのです。

さらに興味深いのは、「ほころぶ」という言葉そのものにも二つの意味があることです。一つは、縫い目がほどけること。もう一つは、花のつぼみが開くことや、人の表情がやわらぎ笑顔になること。私たちは「ほどける」というと、つい悪いことのように考えがちですが、自然の世界では、固く閉じていたものがゆるむことで、新しい姿が現れます。花が咲くのも、笑顔になるのも、「ほころぶ」から始まります。

刺繍の仕事をしていると、糸がほどけないように丈夫に縫うことばかり考えてしまいます。しかし、漢字の世界では、「綻ぶ」という言葉は、壊れることだけではなく、開くことや、やわらぐこと、新しい変化を表す意味も持っているということを知りました。

糸から成り立つ漢字にも、そんな奥深い物語が隠されているのだと思うと、糸編の字はなんとも興味深いと感じ(漢字?)ます。